「昇格」と「昇級」という言葉、同じ意味で使っていませんか?
実はこの2つ、似ているようで大きな違いがあります。キャリアアップを考えるうえで、この違いを理解しておくことは非常に重要です。
昇格は「役職や地位のアップ」を意味し、昇級は「給与ランクのアップ」を意味します。つまり、昇格=ポジションの変化、昇級=待遇の変化。
この記事では、両者の定義を詳しく解説するとともに、キャリアアップにどうつながるのか、具体例を交えてわかりやすく紹介します。
昇格とは?
定義
昇格とは、役職や地位が上がることを指します。一般社員から主任、主任から課長、課長から部長といったように、組織内でのポジションが上がることです。
特徴
- 権限や責任が増える
- 部下やチームを持つことが多い
- 会社の意思決定に関わる機会が増える
- 給与や待遇も連動して上がることが多い
例
- 一般社員 → 主任(初めて部下を持つ)
- 主任 → 課長(部署全体をまとめる)
- 課長 → 部長(経営層に近づく)
昇級とは?
定義
昇級とは、給与や賃金ランクが上がることを指します。役職は変わらなくても、評価や勤続年数によって給与テーブルが上がることがあります。
特徴
- 同じ役職でも給与が増える
- 勤続年数や人事評価に基づくことが多い
- 職能給・年俸制などの制度に影響される
例
- 一般社員のままでも、毎年の昇給で給与が上がる
- 主任のままでも、評価によって等級が1ランクアップする
昇格と昇級の違いを比較
項目 | 昇格(ポジションUP) | 昇級(給与ランクUP) |
---|---|---|
意味 | 役職・地位が上がる | 給与ランクが上がる |
基準 | 能力・成果・リーダーシップ | 勤続年数・人事評価 |
変化 | 責任・権限が増す | 給与・待遇が増す |
例 | 一般社員 → 課長 | 主任のまま給与UP |
キャリアアップとは?
「キャリアアップ」とは、スキル・経験・役職・待遇が総合的に向上することを指します。つまり、昇格や昇級はキャリアアップの一部であり、両方が合わさることで「成長実感」を得やすくなります。
キャリアアップの具体例
例1:昇格を伴うキャリアアップ
- 一般社員から課長へ昇格
- チームを率いる立場となり、責任と給与が同時に上がる
例2:昇級を伴うキャリアアップ
- 主任のまま勤続10年で給与等級が2ランクアップ
- ポジションは変わらないが待遇が改善
例3:昇格+昇級の両方
- 課長から部長に昇格
- 役職に応じて給与等級も大きく上がる
キャリアアップを目指すために必要なこと
- 成果を出す → 昇格の条件
- 継続的に働く → 昇級の条件
- 専門スキルを磨く → キャリアの基盤
- リーダーシップを発揮する → 昇格に直結
- 転職や資格取得も選択肢に → 市場価値を高める
昇格・昇級がない会社に勤め続けるリスク
1. モチベーションの低下
昇格や昇級の機会がない会社では、「頑張っても報われない」という気持ちになりやすく、仕事へのモチベーションが下がります。長期的に見ると成長意欲そのものが失われる危険があります。
2. スキルが停滞する
昇格=責任や新しい経験を得る機会、昇級=待遇改善による安心感。これらがないと「今の業務だけでキャリアが止まる」リスクが高まります。結果として、外部市場での価値も低下しかねません。
3. 市場価値の低下
役職経験や昇級実績は転職市場での評価ポイントです。
- 昇格経験あり → マネジメント経験として高評価
- 昇級実績あり → 能力評価を受けている証拠
どちらも得られないと、転職活動で「成果が見えにくい人材」とみなされ、選択肢が狭まります。
4. 将来の収入格差
同じ年齢でも、昇格・昇級を重ねてきた人と、そうでない人では年収に大きな差が生まれます。20代では小さな差でも、40代・50代になると数百万円単位で差がつくケースもあります。
転職戦略でキャリアを守る方法
1. 自分の市場価値を知る
- 転職サイトやエージェントで「スキル診断」を受ける
- 自分の年齢・経験で市場平均と比べ、どの位置にいるかを確認
2. 昇格・昇級制度のある会社を選ぶ
- 評価制度が明確かどうか(昇格基準が社内で公開されているか)
- 定期昇給制度があるか
- 実際に昇格した人のキャリア事例を調べる
3. スキルと実績をアピールする
転職活動では「どんな責任を担ったか」「どんな成果を出したか」を具体的に伝えることが重要です。肩書がなくても、リーダー経験や業務改善の成果を言語化することで評価されます。
4. キャリアの二軸を意識する
- 昇格(役職アップ) → マネジメントやリーダー経験
- 昇級(待遇アップ) → 専門スキルや成果
この両方を伸ばせる環境を選ぶことが、長期的なキャリア安定につながります。
格・昇級がない会社に勤め続けるリスクと転職戦略」を追加してさらに実用性を高められますが、追加しますか?
年代別キャリアアップ戦略
キャリアアップは「年齢やライフステージ」によって最適なアプローチが変わります。ここでは 20代・30代・40代以上 の年代別に、昇格・昇級を実現するための具体的な戦略を解説します。
20代:土台を固める時期
20代はまだキャリアの序盤。基礎的なスキルや実績を積み上げることが最優先です。
戦略ポイント
- 仕事の幅を広げ、多様な経験を積む
- 失敗を恐れず挑戦する
- 業務改善や成果を「数字」でアピールできるようにする
- 昇級のために資格取得やスキルアップに投資する
👉 この時期は「昇格よりも成長」が重要。成果を積み重ねることで30代の昇格につながります。
30代:昇格・昇級のチャンスが増える時期
30代は組織の中核を担う世代。管理職候補として昇格を意識する人も多くなります。
戦略ポイント
- チームリーダーや後輩指導の経験を積む
- 昇格に直結する「リーダーシップ」「マネジメント力」を磨く
- 同時に専門性を高め、昇級の根拠となるスキルを確立する
- 「会社に依存せず転職市場でも評価される人材」を意識する
👉 昇格と昇級の両方をバランスよく狙える時期。役職と給与アップをセットで意識しましょう。
40代以上:実績を活かしキャリアを安定化させる時期
40代以上はキャリアの成熟期。管理職経験や専門性を活かして「次のキャリアの方向性」を決める時期です。
戦略ポイント
- 組織マネジメントや経営に関わる機会を増やす(昇格重視)
- 専門スキルを深化させ、外部市場での希少価値を高める(昇級重視)
- 昇格の機会が限られる場合は「転職」「独立」「副業」でキャリアを広げる
- 若手の育成を行い、社内外での信頼を築く
👉 「出世レース」だけではなく、「自分らしいキャリアの形」を考えることが大切です。
まとめ(年代別編)
- 20代 → スキルと経験を積み、基礎固めの時期
- 30代 → 昇格・昇級の両方を狙える勝負の時期
- 40代以上 → 実績を活かし、安定と多様な選択肢を広げる時期
それぞれの年代に合った戦略を意識することで、キャリアアップの道筋がより明確になります。
失敗するキャリアアップの例(やってはいけない昇格・昇級の考え方)
キャリアアップを目指すうえで重要なのは「正しい方向性」を持つことです。昇格や昇級を誤解してしまうと、努力しても成果につながらず、逆にキャリアを停滞させてしまいます。ここでは代表的な失敗例を紹介します。
1. 昇格=ゴールだと思い込む
「課長になったからもう安泰」と安心してしまうのは大きな間違い。役職はスタート地点に過ぎず、その後の成果やリーダーシップが問われます。油断すると逆に評価を落とすリスクがあります。
2. 昇級=年功序列に任せる
「長く働いていれば給料は上がる」という発想は危険です。成果主義を取り入れる企業が増えているため、ただ勤続年数を重ねても大きな昇級につながらない場合があります。
3. スキルを磨かず役職だけ狙う
マネジメント経験を重視するあまり、専門スキルや市場価値を高める努力を怠ると、転職市場では評価されにくくなります。「役職だけの人」にならないよう注意が必要です。
4. 昇格・昇級に執着しすぎる
「昇格しなければ意味がない」と焦りすぎると、周囲との関係悪化やメンタル不調につながることも。キャリアアップは長期戦であり、柔軟な視点を持つことが大切です。
5. キャリア戦略を持たない
場当たり的に働き続け、「気づいたら昇格も昇級もなかった」というパターンも多いです。
- 3年後にどうなりたいか
- どんなスキルを身につけたいか
を意識しないと、キャリアが会社任せになってしまいます。
失敗しないためのポイント
- 昇格=役割拡大のスタート と捉える
- 昇級=努力と成果の積み重ね と理解する
- スキルと経験の両輪 でキャリアを設計する
- 長期的なキャリアビジョン を描き、計画的に行動する
海外と日本の昇格・昇級の違い
昇格・昇級の考え方は、日本と海外で大きく異なります。キャリアアップの道筋を理解するために、両者の特徴を比較してみましょう。
日本の場合
- 年功序列の文化が根強い
→ 勤続年数が長ければ昇級しやすい - 昇格は時間をかけて段階的に
→ 主任 → 係長 → 課長 → 部長とステップアップ - 横並び意識が強い
→ 急激に差をつけるより、全体のバランスを重視 - 長期雇用を前提
→ 転職よりも社内昇進が基本ルート
海外(欧米企業)の場合
- 成果主義が中心
→ 成果やスキル次第で20代でも管理職に昇格可能 - 昇級は能力に応じて柔軟に
→ 「給与レンジ」の幅が広く、成果が出れば一気に昇給 - ジョブ型雇用
→ 役職やポジションは「役割」であり、成果が出なければ降格もあり得る - 転職が一般的
→ 昇格・昇級のために会社を変えるのは普通のキャリア戦略
日本と海外の比較表
項目 | 日本型キャリア | 欧米型キャリア |
---|---|---|
昇格スピード | 年功序列、段階的 | 成果次第でスピード昇格可能 |
昇級基準 | 勤続年数や人事評価に依存 | 成果とスキルに応じて柔軟 |
雇用文化 | 長期雇用・会社に忠誠 | 転職前提・個人のキャリア重視 |
リスク | 昇格・昇級が遅い | 成果が出ないと降格・解雇も |
グローバル視点でのキャリアアップ戦略
- 日本型+欧米型のハイブリッド思考
→ 安定した環境で経験を積みながら、成果を重視して自己成長をアピールする。 - 海外転職・外資系も視野に入れる
→ 実力次第でスピード昇格・昇級が狙える環境もある。 - スキルの“国際通用性”を意識する
→ 語学力、ITスキル、マネジメント経験は海外でも評価されやすい。
未来予測:これからの日本で昇格・昇級はどう変わるか?
働き方改革や人材流動化の加速により、日本の「昇格・昇級の仕組み」も変化しつつあります。今後の方向性を予測してみましょう。
1. 年功序列の弱体化
従来の「勤続年数で昇級する」仕組みは縮小傾向にあります。成果やスキルを重視する企業が増え、若手でも成果を出せば昇格・昇級が可能になるケースが増えるでしょう。
2. ジョブ型雇用の浸透
欧米型の「ジョブ型雇用」が少しずつ広がり、職務内容や成果に応じて昇格・昇級が決まる流れが強まります。
→ 役職名よりも“役割”で評価される時代 にシフトしていきます。
3. 専門スキル重視の昇級
IT、データ分析、語学など「専門スキル」が給与に直結する流れが加速します。昇級のためには、業務成果+専門スキルが必須になる可能性が高いです。
4. リーダーシップの早期評価
管理職不足が叫ばれる中、若手社員でも「マネジメント力」を早期に評価して昇格させるケースが増えています。
→ 20代後半で課長、30代で部長クラス も現実的になりつつあります。
5. 転職によるキャリアアップが主流化
昇格・昇級のために「会社を変える」のが一般的なキャリア戦略になっていくでしょう。
→ 転職市場での評価を意識したスキル・実績づくりが重要になります。
キャリアアップを未来に備えるには?
- 市場価値を高めるスキル学習(デジタルスキル、語学、資格)
- 社内外での実績を可視化(数字や成果で語れるようにする)
- 副業や社外活動で経験を広げる(会社依存から脱却)
- 昇格=役割拡大、昇級=市場評価 と捉えて両立を目指す
有名企業の昇格・昇級制度の事例
実際にどのように昇格・昇級が運用されているのか、国内大手企業や外資系企業の例を見てみましょう。
トヨタ自動車(日本の大手製造業)
- 昇格:役職登用は厳格で、成果やリーダーシップが重視される。課長以上は海外赴任や大型プロジェクト経験が必須となるケースが多い。
- 昇級:年功要素も残るが、近年は「成果主義」も導入。職能等級制度を採用し、スキルと貢献度で昇級幅が決まる。
👉 「グローバルに通用する人材」が昇格の鍵。
楽天グループ(日本のIT企業)
- 昇格:若手でも成果を出せばスピード昇格可能。20代課長も珍しくない。
- 昇級:成果主義を徹底。OKR(目標管理)で達成度を評価し、給与に直結。
👉 「実力主義」「英語必須」が特徴で、外資系に近い昇格・昇級スタイル。
三菱UFJ銀行(日本の金融業界)
- 昇格:伝統的に年功序列要素が強かったが、現在は成果や専門性も重視される。
- 昇級:評価制度が細分化されており、毎年の人事評価で給与等級が変動。
👉 「安定志向」と「成果主義」のバランスを取った制度。
Google(外資系IT企業)
- 昇格:完全成果主義。年齢に関係なく、成果とリーダーシップを示せば昇格可能。逆に成果を出せなければ降格もある。
- 昇級:給与レンジが幅広く、パフォーマンスに応じて大幅昇給が可能。
👉 「ジョブ型雇用」「成果主義」の典型例。
P&G(外資系消費財メーカー)
- 昇格:「育成型昇格」が特徴。新卒でも数年でマネージャーを任されることがあり、人材を早期に鍛える文化がある。
- 昇級:成果に応じて柔軟に設定され、昇格と同時に給与も大幅アップするケースが多い。
👉 「早期昇格・早期育成」で有名な外資系スタイル。
事例から学べること
- 日本企業 → 年功序列要素を残しつつ、成果主義を強化する方向へ移行中
- 外資系企業 → 成果主義を徹底し、昇格・昇級のスピードが早い
- IT・ベンチャー系 → 実力次第で20代でも管理職になれるチャンスがある
まとめ(事例編)
企業によって昇格・昇級の仕組みは大きく異なります。
- 伝統的大企業 → 安定志向+徐々に成果主義化
- 新興IT企業 → スピード昇格・成果直結の昇級
- 外資系 → 成果重視・実力主義・柔軟な給与体系
自分のキャリア志向に合った環境を選ぶことが、キャリアアップ成功の近道です。
キャリアアップ診断チェックリスト
以下の質問に「はい / いいえ」で答えてみてください。
当てはまる数によって、あなたが「昇格型キャリア」か「昇級型キャリア」かが見えてきます。
昇格志向チェック
- リーダーやマネジメントに挑戦したい
- 人を動かすことにやりがいを感じる
- 将来は経営に関わりたい
- 部署や組織に影響を与える仕事をしたい
- 責任が重くても成長のためなら受け入れたい
👉 3つ以上当てはまる → 昇格型キャリア志向
(管理職やリーダーとしてキャリアを伸ばすのが向いています)
昇級志向チェック
- 専門スキルを高めるのが好きだ
- 一人で成果を出す仕事が得意
- リーダーよりも「プロフェッショナル」として活躍したい
- お金や待遇が大きなモチベーションになる
- 転職も視野に入れてキャリアを考えている
👉 3つ以上当てはまる → 昇級型キャリア志向
(専門スキルを磨き、市場価値を高めて待遇アップを狙うのが向いています)
バランス型チェック
昇格・昇級の両方で3つ以上当てはまった方は、バランス型キャリア志向。
マネジメント経験と専門性を両立できれば、どんな環境でも通用する“市場価値の高い人材”になれます。
診断結果の活用方法
- 昇格型の人 → リーダーシップを発揮する仕事を積極的に選ぶ
- 昇級型の人 → 専門分野を深掘りし、スキルアップ投資を行う
- バランス型の人 → 昇格と昇級の両方を視野に入れ、柔軟にキャリア戦略を立てる
👉 自分の強みや志向性を理解することが、キャリアアップ成功の第一歩です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 昇格すれば必ず昇級しますか?
A. 多くの場合、昇格すると給与も上がりますが、必ずしも同時とは限りません。役職手当だけが加わるケースもあります。
Q2. 昇級しても昇格しないのはなぜ?
A. 昇級は評価や勤続年数に基づくため、役職が変わらなくても給与だけ上がることは珍しくありません。
Q3. キャリアアップの最短ルートは?
A. 昇格と昇級の両方を狙うこと。成果を出しつつ、スキルを磨き続けるのが最速です。
まとめ
昇格と昇級は似て非なるものであり、どちらもキャリアアップの重要な要素です。
本記事では、
- 昇格と昇級の定義と違い
- キャリアアップの具体例
- 昇格・昇級がない会社のリスクと転職戦略
- 年代別キャリアアップ戦略
- 失敗例(やってはいけない考え方)
- 日本と海外の違い
- 未来予測
- 有名企業の事例
- キャリアアップ診断チェックリスト
を解説しました。
知識を得るだけでなく、診断で自分のタイプを理解し、今日から具体的なアクションを取り始めましょう。