明らかなミスや不適切な言動があっても、決して「ごめん」と言わない人がいます。
職場でも家庭でも、謝らない態度は関係悪化や生産性の低下を招き、周囲に大きなストレスを与えます。
では、なぜ謝れないのでしょうか?
本記事では、謝らない人の心理と特徴をわかりやすく解説し、シーン別の向き合い方、上手な伝え方、そして自分が「謝れない側」にならないための実践ポイントまでをまとめます。
謝らない人の心理:心の裏側で起きていること
「謝らない=性格が悪い」と短絡的に決めつける前に、まずは心理メカニズムを押さえましょう。
1. 自尊心の防衛
- 謝る=自分の価値が下がる、と無意識に感じる
- 失敗を認める痛みから自分を守ろうとする
2. 認知的不協和の回避
- 「自分は正しい」という自己イメージと失敗の現実が矛盾
- その不快感を避けるため、事実を矮小化・正当化する
3. 恥の回避・羞恥耐性の低さ
- 罪悪感(行為への反省)よりも恥(自分そのものがダメだという感覚)が強く、硬直する
4. 権力と立場の問題
- 役職・年齢・親密さを盾に「謝らなくてもよい」と思い込む
- 上下関係が強い文化で起こりやすい
5. 学習と家庭環境
- 子ども時代に「謝ったら負け」「謝るのは弱さ」と学んだ
- 適切な謝罪モデルを見てこなかった
謝らない人の特徴チェックリスト(当てはまる項目が多いほど要注意)
- 事実よりも意図を強調して責任をぼかす(「悪気はなかった」)。
- 受け手の感情より自分の面子を優先する。
- 指摘されると論点ずらしや過去掘り返しを行う。
- 「みんなやってる」と同調圧力で正当化する。
- ミスを認めず、条件付きの謝罪が多い(「もし不快だったなら…」)。
- 具体的な再発防止策を提示しない。
- 沈黙・無視でやり過ごす。
- 謝罪のタイミングを逃し、時間稼ぎをする。
- 外的要因(天気・忙しさ・他人)に責任転嫁する。
- 感情が高まると攻撃・皮肉で相手を黙らせる。
「謝れない」行動がもたらす悪影響
- 信頼の毀損:小さなミスより、認めない態度が信用を削る
- 生産性の低下:原因が特定されず、同じ不具合が繰り返される
- 関係の硬直化:感情の澱(おり)が溜まり、協力関係が壊れる
- 学習機会の喪失:失敗から学べない組織・家庭になる
謝罪の質を見分ける:悪い謝罪 vs. 良い謝罪
| 観点 | 謝罪もどき | 良い謝罪 |
|---|---|---|
| 主語 | 「でも」「だって」で自己弁護 | 自分を主語にして責任を明確化 |
| 具体性 | 「色々ご迷惑を…」と曖昧 | 何を・いつ・どう間違えたか明言 |
| 相手感情 | スルーまたは軽視 | 影響・感情を認めて言語化 |
| 再発防止 | 言及なし | 手順・期日・担当を提示 |
| 形だけ | 定型句で終了 | 対話で合意をとる |
シーン別:謝らない人への上手な向き合い方
職場で
- 記録ベースで事実を共有:口頭ではなく、メール・議事録で「何が起きたか」を残す。
- 合意形成のフレームを使う:
- ①事実 ②影響 ③要望 ④合意(期日・方法)
- 例:「昨日の資料でAの数値が欠落→取引先説明に支障。本日17時までに差し替えで合意できますか?」
- 個人攻撃は避ける:人格ではなく行動に焦点。
- 継続する場合は上長・人事と共有し、仕組みで是正。
家族・パートナー
- Iメッセージで伝える:
- 「あなたが遅れたせい」→「連絡がないと私は不安になる」
- 具体的な期待値の言語化:「18時に遅れそうなら15分前にLINEしてほしい」
- 感情が高ぶったらクールダウン(一時離席・時間指定で再開)。
友人・知人
- **境界線(ボーダー)**を設置:繰り返されるなら会う頻度・関わりを調整。
- 関係維持より自己保全を優先してOK。
オンライン・SNS
- 公開の場で論争しない。非公開DMで事実と影響のみを伝える。
- 認めない場合は記録保全とミュート・ブロックで距離を置く。
伝え方テンプレ:DESC法×Iメッセージ
- D(Describe)事実:「昨日の会議で私の発言を遮って別案と断定しました」
- E(Express)感情:「驚きと困惑を感じました」
- S(Specify)要望:「今後は最後まで聞いた上で意見をください」
- C(Consequences)結果:「その方が議論が深まり、結論が早くなります」
ワンポイント
- 皮肉・断定語(「いつも」「絶対」)はNG
- 1メッセージ=1論点。混ぜない
それでも謝らない時の「境界線とリスク管理」
- 繰り返しのルール化:フォーマット、締切、承認経路を明文化
- エスカレーション:関係者含めた3者以上で再発防止を合意
- 守れない場合の選択肢:担当変更・契約見直し・距離を置く
- 自分の安全確保:モラハラ化するなら専門窓口や第三者へ相談
自分が「謝れない側」にならないために:セルフチェック
以下に3つ以上当てはまったら要注意。
- 指摘されると言い訳の言葉が先に出る
- 「悪気はなかった」をよく使う
- 相手の感情より自分の意図を説明したくなる
- 具体策より一般論で終わらせがち
- 時間が経てばうやむやでいいと思う
- 「謝ると負け」と感じる
良い謝罪の5要素(そのまま使える)
- 認知:何を・いつ・どこで(事実の特定)
- 責任:言い訳なしで自分の関与を明言
- 共感:相手の不便・感情を言語化
- 再発防止:具体策・期日・担当
- 補償・回復:必要に応じて代替・修復案
例文(短文版)
「昨日の見積で単価を入れ忘れました(認知・責任)。先方の検討を遅らせてしまい失礼しました(共感)。本日13時までに差し替え、以後は二重チェック表を導入します(再発防止)。今回の遅延分は私が直接説明します(回復)。」
ケースで学ぶ:よくある“ダメな一言”の言い換え
- 「でも、そんなつもりじゃ…」
→ 言い換え:「意図はどうあれ、結果として不快にさせました」 - 「皆やってます」
→ 言い換え:「私が守るべき基準を外しました」 - 「忙しかったので」
→ 言い換え:「優先順位の判断を誤りました。次回から締切前日締めで進めます」
まとめ
- 謝らない背景には自尊心の防衛/恥の回避/学習歴がある。
- 特徴は「条件付き謝罪」「論点ずらし」「責任転嫁」「再発防止なし」。
- 向き合い方は事実→影響→要望→合意の順で、人格ではなく行動を扱う。
- うまくいかない場合は境界線を設け、記録と仕組みで是正。
- 自分が「謝れない側」にならないために、5要素の謝罪と言い換えを日常化する。

